初めて見たキャベツの収穫光景、圧倒されました。畝をまたぎながら自動で進む台車。4人で台車を真ん中に囲んで進みながら、収穫適期の大きさのキャベツを切り、大きな外葉を落とすと、切り口を上に台車に積んでいきます。あっという間にキャベツのピラミッドが完成。
歩きながらの収穫作業。腰を下ろす暇はなく、体を折って、キャベツ専用包丁を株元に差し込み一振り、時には2〜3玉同時に持ち、動く台車に積んで・・・その繰り返しです。神経を集中させて、気力も体力も必要な作業です。
高鍋町は九州のキャベツ生産の中心地。そのキャベツ栽培を広めた立役者の一人が三雄さんのお父さん。84歳になった今も、毎日家族やパートさんと一緒に畑に出ます。
撮影の日も台車を操作しながらキャベツも収穫、「(お父さんのペースで台車を動かすと早すぎて収穫が追いつかず)「止めてー!」っていうこともあるんですよ」。
一つ一つ包丁で収穫していくスタイルは、お父さんが栽培を始めた頃と変わらないそうです。8玉入りのキャベツ箱を平均1日200箱。市場が休みの前日(火曜と日曜)以外、毎日午前中に収穫しては箱に詰め、昼食を済ませると急いで市場へ送り届けます。
ながとも農家はキャベツと白菜を主に栽培。特に冬はしっかり巻いてずっしり重い寒玉キャベツがお勧め。このキャベツを見ると冬がきた、キャベツの旬の季節がきたと嬉しくなります。
永友さんの寒玉キャベツを頂きました。キャベツの甘みがスープに溶け出し、驚くほど甘い味噌汁になりました。他の出汁はいりません。炒め物やロールキャベツ、餃子など加熱して柔らかくして食べるのが私のお気に入りの食べ方。旬のキャベツは加熱するとその甘みをいかんなく発揮します、もちろん千切りサラダでも。
「こだわりは特にない。あえて言うならなるべく自然に、かな」と三雄さん。たとえば虫が多かったり、花芽が出かけたキャベツがあっても、必要以上に農薬を撒いたり野菜を潰すことはせず、そのままにすることが多く「うちの畑だけ蝶々がたくさん舞っていたこともあったね(笑)」と夫婦で同じ気持ちを共有。
ながとも農家の加工品のラベルには、畑に出没するキツネやうさぎのイラストが。農業を始める前はアフリカや外国を放浪していた三雄さん。虫や動物とともに育ったキャベツに誇りを持っています。
取材の日、強風に煽られよろめきながら、スタッフ一同慎重に畑へ足を踏み入れました。ながとも農家の畑は広大な平地(染ヶ岡地区)の一角にあります。遮るものがない平坦な台地に、冬の強風が容赦なく吹き荒びます。日本トップクラスの宮崎の日照時間を存分に感じられる、日当たりも最高の畑です。
染ヶ岡には専業農家が多く、キャベツや白菜をのせたトラックが行き交い、あちこちで収穫や植え付けの作業風景がみられます。8月、染ヶ岡の畑一面にひまわりが咲きます。
2010年、口蹄疫が発生して染ヶ岡のキャベツ農家は窮地に陥りました。肥料としていた牛や豚の堆肥が畑にまけなくなったのです。そこで一部の農家が実践していたひまわり緑肥が、染ヶ岡全体に広がりました。
緑肥として使用でき、太陽のように見る人を勇気付けるひまわり。現在、約30軒が賛同し、夏になると県道沿いを中心に約8.3ヘクタールの畑に約1100万本のヒマワリが花を咲かせ、祭りも開かれ、畑が観光名所になります。
「キャベツ畑のひまわり祭り」で飛鳥さんは広報宣伝を担当、三雄さんは会場でのライブを担当。他にも小学校での講話や農家女性グループの活動など、地域や農業を活気づける活動に積極的な永友夫妻です。
「本当は季節外には、ないならないでいいんだろうけど。いつもスーパーに並んでいるからね。必要とされているから」と三雄さん。料理しやすいキャベツはいつの季節も人気の野菜です。
ながとも農家では収穫時期にあわせて9〜10種のキャベツを育て、10月中旬〜6月中旬にかけて約8ケ月出荷を続けます。一枚の畑で年約2回収穫。そのため常に複数の作業が存在します。午前中に収穫して出荷すると、午後から収穫以外の作業をする毎日。
例えば、10月中旬にキャベツの収穫が始まる頃には、3月〜4月に収穫する春キャベツの種まきも始まります。収穫と並行して、消毒、除草、追肥などの管理作業、11月下旬からは二回目の作付け作業も始まり3月まで続きます。
3月〜4月頃に収穫するキャベツはほぼ農薬を使うことなく育てられるそうで、三雄さんのお勧めは4月に出荷する、12月に定植して冬の寒さに耐えて育つ早生タイプのキャベツ。柔らかくてお勧めです。
雨続きでキャベツが定植できなかったり、高温で障害がでたり、作業や生育状況は天候に左右されることが多くありますが、「自然には逆らえません」と、そんな時もひたすらタイミングを待ちます。
「丸ごとひと玉、全部食べても飽きないキャベツが目標」「キャベツの可能性を加工品でも沢山の方に広げたい」「農業という仕事についても沢山の方に知ってもらいたい、私たちらしく情報発信をしていけたら」。生産の現場からできることを。ながとも農家の夢と挑戦は続きます。
『無添加 キャベツのディップソース』は、キャベツの甘みに味噌でコクを加えた、キャベツの美味しさを知る農家ならではのオリジナルソース。クラッカーにつけて試食させてもらったら美味しくて、早速一瓶購入しました。
ディップソースといってもニンニクをぐっと抑えているので、朝食やランチにも使えそうです。野菜スティックやグリル野菜に、パンに、オリーブオイルでのばしてサラダのドレッシングに本当に何に合わせても美味しい。なんと一瓶にキャベツが3分の2玉以上入っていて、まさに野菜を食べる野菜調味料。ラベルのひばりはキャベツ畑のマスコット、キャベツの株元に巣を作ることもあるそうです。
キャベツは価格変動が激しく不安定。8玉入りの一箱が800円の時もあれば300円になることも(!)。箱代、人件費、運搬費・・・赤字になる不安は拭えません。「一生懸命に育てたキャベツを大事にしたい、安心していいキャベツを育てたい」と飛鳥さん。『きゃべつかりんとう』『キャベツ粉』『乾燥キャベツのパリポリ』と合わせて現在4種の加工品を企画販売。どれもキャベツ本来の美味しさがしっかり伝わってきます、ぜひお試しください。