小林市野尻町の国道には緑の「メロン型の街灯」が灯り、町の自然派レジャースポットのじりこぴあには「メロンドーム」というメロン形の物産館もあります。また、毎年5月最後の土曜日には「メロン・マンゴーフェア」が開催され付近の国道は大渋滞。戦後の高度成長期に「農家の収入源に」と昭和48年から始まったメロン栽培。最盛期には110軒ほどだった農家も、今ではJAこばやし管内の1市1町であわせて60軒ほどになりました。
10年ほど前からはマンゴー栽培に転換する農家も増え、メロンの町からマンゴーの町へ変わりつつある野尻ですが、町の経済発展を支えたメロンの功績は今でも地元のメロン農家の誇りです。現在はアールスメロンを主力に栽培が行われています。12月から始まった収穫は初夏に旬を迎え、6月まで出荷が続きます。
糖度のばらつきをなくし、メロンのブランド価値を更に高めようと10年ほど前から導入された光センサーによる糖度検定。取材の日も早朝8時から選果場は稼働し始め、30人ほどが分担して作業に当たっていました。多い日は1日7,000玉のメロンの糖度測定を行います。レーンをメロンが流れてきてそれを一つ一つ手作業で外観の検査を行いセンサーにかけていきます。巨大な選果場はまるで倉庫!
ここで14度以上の糖度があり、美しい外観と十分な大きさをもつと認められたものだけが通称「めろめろメロン」として 東京や大阪、福岡など都市部を中心に出荷されていきます。
部会長の大角さんも東京や大阪の市場へ出向き、直接アピールに余念がありません。全国のメロン産地が交流するメロンサミットにも生産者代表で出席するため、来月は茨城にも出張です。12月のお歳暮の季節にはメロンが市場で足りなくなることも多く、生産者の減少を嘆く大角さん。そんな時にも「市場にお叱りをうける」とチャーミングな表現で気を配りいつも笑顔。実は私の親戚でもある大角さん、小さい頃から見ていますが笑顔の記憶しかありません。もう10年以上もメロン部会長をされていますが、やはりそういうことなのだとしみじみ思いました。
「めろめろメロン」は収穫してから1週間ほどで食べごろになります。見分け方はお尻が柔らかくなるか、つるがしおれてきたら、熟した合図。「冷蔵庫では1時間くらい冷やすとちょうどよい」。「頭とお尻を逆さにして冷やすと果肉全体が甘くなって一番美味しい」と教えてもらいました。私も野尻町民ですが、これは初めて知りました。
また、メロンを6〜8等分に切った後、メロンの皮をもったまま振って種を落とすと種の周りのおいしいところも余すところなく食べられることも初めて知りました。
メロンを振って種を落とすという発想に、なるほど、と勉強になりました。
取材日には収穫して1〜2日目のメロンをいただきましたが、適度な甘みと果肉の弾力があって、個人的には熟したものより好きだなと思いました。もしメロンが苦手な方は少し早めに食べると、食べやすく感じるのかもしれませんね。
ハウス一面に広がるメロンの大きな葉っぱ。顔よりも大きく葉っぱもずっしりと重みがあります。メロン栽培ではこの大きい葉っぱでできた養分で、一つの樹に、たった一個だけならせます。
そのためメロンの生長を揃える芽かき作業、きれいなネットに仕上げるための作業、軍手をして一つ一つ樹になっている玉を手作業で丁寧に磨き上げるのも大事な作業でとにかく今回強くメロンを向き合う。
また「とにかく換気が大事」と大角さん。葉つゆがあると病気の温床になり、病気が発生しやすくなるから「特に雨のときや湿度が高いときは気を使う、風を回して乾燥させます」と栽培管理には常に気が抜けない様子。
また特に害虫天敵である根こぶせん虫により樹が枯れてしまうこともあり、一年に2作行う(2回植え付けを行う)なかで、1作目は90%以上の樹で実がなっても、2作目は85%前後と収穫量が落ちてしまうそうです。
一度の失敗でそれまでの努力が台無しになってしまうメロン栽培ですが、「それが技術」と、プロの目で適切なハウス環境であるか見抜いて管理することで無事に収穫までもっていくことを教わりました。
「メロンの栽培はメロンフェアを見越して行う」というほど、メロンを求めて多くの人が集まるメロンフェア。5年前からはメロン・マンゴーフェアと名前も変わりましたが、昨年は1日でメロン7,000ケースを販売。2玉入りや3玉入り、タカミメロンなどいろいろな組み合わせがある中、値段表には次々に完売御礼のシールが貼られていきます。メロンは生産者番号シールが貼られて出荷されます。糖度センサーでレーンを流れてくる生産者シールが貼られたメロンをみて、生産者が自分のメロンの証をつけて出荷できる、それがメロン栽培の醍醐味の一つでもあると感じました。
一ヶ月かけて苗づくりをして植え付けて、一ヶ月で花が咲いて、二ヶ月後種まきから起算して四ヶ月かかってようやく収穫できます。「変形していないか」「メロンのネットの盛り上がりは大丈夫か」「病害虫はいないか?」毎日ハウスに足を運び毎日成長を見守る姿は、まるで子どもを育てているようでした。
メロンには「日焼け防止の新聞紙」をかけます。「緑色にならないように」。日除けのためにかけられた新聞紙の下には大きなメロン。毎日の栽培管理をしながらこのメロンが収穫する日を待ちわびる、ブランドは1日にしてはならず、一人でもできない。ブランド作りにはたくさんの努力と工夫、それこそが全てなのだとため息がでました。