2013年9月 地元紙の経済欄に松田さんの写真が大きく載りました。祝子農園と菓子店「虎屋」(延岡市 上田耕市社長)が共同開発した、祝子農園の玄米を使ったお菓子が好評という記事です。玄米ポン菓子の原材料は、玄米、海水塩のみ。松田さんに、そのポン菓子を頂きました。「香ばしい、食べやすい、ふんわり甘い」3拍子揃ってて、無意識に2枚目に手が伸びました。特にそのサックリした軽い食感の中からも十分に感じられる香ばしさと塩加減が絶妙で、年配の方にもお子さまにも勧めたい、知ってほしいなと思うお菓子です。
松田さんは玄米ポン菓子を始め、米を使った「美味しくて体に優しい」商品開発にも着手。食生活に悩みを抱える人の役に立ちたいという思いから、米栽培のノウハウを駆使し、新品種の導入にも積極的です。例えば松田さんの「ブレッドライス」という米粉パン用の品種は、小麦アレルギーに悩む人でも食べられるおいしいパンをつくるのに欠かせません。タンパク制限を受けている糖尿病や腎臓病の方でも安心して食べられる「LCG潤」という品種も栽培しています。今回お話を伺い、松田さんのお米に助けられている人が沢山いることを知りました。
松田さんは有機Mリン農法をベースにジャンボタニシの活用やトウガラシ焼酎・ペパーミント酵素の散布など、自然のものを活用した自然にも生き物にも優しい農業を実践しています。新しいものもよいと判断すれば積極的に取り入れ栽培に生かしていきます。
有機Mリン農法とは、農薬や化学肥料に頼らず、植物本来の力を最大限に発揮させることでおいしい農産物をつくることを目的とした農法です。土づくりから丁寧に行います。また、バクヤーゼ菌という有機質資材を発酵させる好気性菌を生かして高温で有機物を分解し、化学的なものを使わないで短期間で良質の堆肥やボカシ肥を作られています。
また、今年は杉や檜などの木から抽出したエキスを使った栽培にも試験的に取組み中。それは、「アレロパシー」という植物が本来もっている、雑草に負けない・虫に負けない成分の効きを強くする効果があるものです。同じ成分のものがあったので匂いをかがせてもらいました。なんとも爽やかな清々しい香りで心地よい香り。これは植物にもきっといい効果がある、そう確信しました。
松田さんはいつも優しく微笑んでいます。「質問があれば何でも教えますよ」といった様子で、何かこちらが質問すると、慎重にわかりやすい言葉を選んで答えてくれます。今回初めてじっくりとお話を聞きましたが、松田さんの話を聞いていると聞きたいことが沢山でてきて、会話がとまりませんでした。
松田さんの視野の広さ、柔軟な発想力、そして行動力。商品開発はもちろん、栽培技術応用のアイデア、駅前開発のアイデアやフットパス構想、ワイナリー構想、街づくりの企画など、話しても話しても尽きることのないお話にすっかり引き込まれてしまいました。
松田さんのお話から感じたのは「自分で自分の際限を決めてしまわない」のが大事だということ。松田さんは、頼まれればどうやったらそれをできるかを考え、困ったことがあるとどうやったらそれを解決出来るか考え、とにかく出来ないで終わらせず、一つ一つ取り組んだことに対して結果を出し続けてきたのが今につながっていることを知りました。話も尽きないまま暗くなってきた頃、松田さんから聞けたのが「頼まれごとは試されごとだと思っている」という言葉でした。納得。 今後の目標を「米のエキスパートになりたい」と語ってくださった松田さん。
「やる気があれば何でもできる、お金はいらない」と、米を主要作物に野菜の栽培、そして最後は果樹まで農園を拡げるのが目標だという松田さん。実は現在4町もの水田をたった一人で管理されています。四十数枚ある田んぼの管理手帳には、1ページに田んぼ1枚ごとの管理記録が箇条書きで残されていました。土づくりや栽培・収穫はもちろん、なんと片道2時間かかる配達なども自分一人でこなしているのにはびっくり。理由をきくと「直接会って話をしてわかることもあるから」。その視野の広さに驚きました。来年には農園を農業法人化して思い描いていた構想を進める予定。今回、松田さんの取材で延岡に来るたびに、延岡がどんどん好きになっていくのを実感しました。