西都市街地を通り抜けて西都原方面へ。ひときわ広い敷地に大きな太陽光パネルの置いてある株式会社ジェイエイフーズみやざきは、冷凍野菜・カット野菜の加工販売を主とする会社です。
特に冷凍ほうれん草は、冷凍野菜・緑黄色野菜では全国で初の機能性表示食品(国が定めた栄養成分を基準量含んでいる食品)として認定され2018年10月から販売を始めています。さらに、原料のほうれん草は、自社と契約農家で生産し、同年5月に、農産物の国際基準であり、国際的に安全管理の評価を得ている農産物であると認められる「GLOBAL GAP」も取得。そして、この事業により先進的な農林水産業の取り組みを讃える2018年度の「6次産業化アワード」(6次産業化推進協議会主催)で、食料産業局長賞に選ばれるなど注目されています。
全国、また世界中に野菜の冷凍工場が多数なる中で差別化を図り、取引先や消費者に訴えられるものが欲しいと取り組んだ、ジェイエイフーズみやざきの事業について、今回はお話を聞きました。
冬の間に霜に当たって甘みが凝縮するほうれん草。これは、気温が下がることで根からの水の吸い上げがなくなり糖度が凝縮され、栄養分の含有量も高まるという「寒締(かんじめ)」によるものです。
原料の生産について特に注意を払った点は、品質を一定に保つこと。気象状況や生産体制によって、含有成分量が異なってしまうため、それをいかに均一化するかというのが一番難しいとのこと。ジェイエイフーズみやざきでは63戸の生産者が同じ肥料、同じ栽培方法で生産を行い、原料に含まれる栄養分のぶれ幅が非常に少ない環境で栽培管理を行っています。
昔ながらの農家に戸別に依頼するのではなく、一斉にほうれん草づくりを同じ工程で生産し始めたきっかけは、2010年の春から夏にかけて宮崎県に広まった家畜伝染病の口蹄疫です。この口蹄疫の被害は、家畜約30万頭が殺処分、経済損失は畜産と関連損失合わせて2000億円を超えるとされています。会社のある尾鈴地域(西都市・児湯郡)はその激震地でもあり、以前は家畜用の餌を栽培する畑が広がっていました。
そこで2010年度の口蹄疫復興対策の事業として株式会社ジェイエイフーズみやざきが立ち上げられ、翌年2011年8月に操業を開始しました。ほうれん草畑が一筆もなかった場所で露地栽培の振興も含めてスタートし、試行錯誤をしながらの8年間で生産を軌道に乗せ、国際基準の品質を保つ商品を作り出すことに成功しました。
今後は、地元の宮崎大学や県とも連携して、他の野菜でも付加価値をつけた商品のシリーズ化を考えているとのこと。安心安全で美味しくて栄養価も高い野菜を一番旬の時期にぎゅっと冷凍して、一年を通して食材として使うことができる。細胞を壊さない最新の冷凍方法で、品質的には生の野菜かそれ以上に美味しい自負があると語る川口さん。
野菜の値段が相場が高い時に冷凍を購入した消費者が、味と品質を認めてリピート買いしている傾向も見受けられ、さらに可能性は広がっています。そんな中、新たに構想しているのが冷凍の料理キット。カットした野菜や肉などを冷凍でセットしたものを商品化して欲しいとの要望が多いのだそう。
食は毎日私たちの健康を支える大切なもの。基準をクリアした確かな食材を年間を通して安定的に手に入れ、美味しく頂く事ができる。口蹄疫の復興支援から始まった冷凍野菜の事業が、未来の食の幸せを広げてくれそうです。