国道268号線を宮崎から小林方面に車を走らせ、道の駅ゆーぱるのじりの向かいにある物産加工場。明るいピンクベージュを基調とした建物に、シンボルとなる野尻小町のイラストがひときわ目を引きます。
のじり農産加工センターは平成10年設立。地元のお年寄りの豊富な経験と能力を活かして、昔から伝わる伝統的な味を受け継いでいこうと作られました。
郷土の味を継承するために、安心安全な食材で、地元産の原料を用いることを原則としていて、野尻町内で生産される農産物を利用した加工品を作って、その付加価値を高めることも目的としています。もともとは、地元のおかあさん達が「野尻町婦人の家加工グループ」として地元に古くから受け継がれてきた味噌、あくまき、ゆべしなどの郷土の味を商品化したものがベースとなっています。
それぞれのパッケージにかわいらしい野尻小町のイラストをあしらいデザインを一新し、県内外のリピーターも多い野尻の加工品について、お話を聞きました。
「昔から母や祖母が作るあくまきの味は大好きだけど、もらうのが専門で(笑)自分たちでどんな風に作るというのはわからなかった」と話す早川尚美さん。
確かに、私も実家で作られていた醤油麹や味噌漬けなど味には親しんでいるけれども、いざ自分たちで作るとなると、、という地元の味は多いかもしれません。
味は知っているけれども自分たちでは作らない世代が増えている今、地元の加工品として商品化することで次の世代に故郷に伝わる食の恵みを伝えていこうと、早川さんたちは様々な商品を手掛けています。
中でも、東京の物産館で人気商品が「あくまき」なのだそう。宮崎生まれ宮崎育ちの私にとっては、確かに美味しいけれどもなんだか少し地味な感じがしないでもないのですが。
東京・新宿駅南口側サザンテラスにある新宿みやざき館KONNEでは月に約300本も売れている人気ぶり。ちなみに、撮影の合間の試食時間、出逢い旅でいつもご一緒する女性カメラマンは東京育ちで、この取材で生まれて初めてあくまきを試食したところ、きな粉の柔らかな甘さと、灰汁の効いた独特なもち米の風味に感動していました。
家庭で灰が出ることがほとんどなくなったことから、家では稀にしか作られることのなくなったあくまき。伝統の味として加工・生産することでセンターを代表する商品のひとつとなっています。ちなみに、パッケージに使われている天然の竹の皮は、筍の季節になると地元のお年寄りが山に入り一枚一枚丁寧に集められたものを、センターで買い取っていて、対価の得られるお年寄りの楽しみの一つにもなっています。
野尻農産加工センターで作られる商品は、麦味噌をはじめとする味噌の加工品。野尻で多く生産されているメロンやマンゴーのシャーベットや、県と協力して開発したドレッシング、ハーブティーなど。センターでの直売や、道の駅、県の物産館、インターネットでも販売しています。
原則地元産の原料にこだわって生産しているため、大量出荷というわけにはいきませんが、手作りで安心して食べてもらえるものを作り続けたいと考えているそうです。また、味噌は近隣の学校や保育園でも給食の食材としても使われ、野尻の子供たちの健やかな成長の礎となっています。
今後は郷土料理の伝承に努めていきたいと話す早川さん。私たちが覚えていることを若い世代が受け継いでくれて味がなくならないようにしていきたい、その想いを胸に毎日のお仕事に励んでいます。さらに、地元以外の方にも野尻の味を広めていきたいと考え、センターで生産した商品はふるさと納税でも取り扱われています。
懐かしさを感じる味、ふるさとや思い出が蘇る味、遠く地元を離れた人にも、田舎を持たない都会暮らしの人にも。ほっと一息、おばあちゃんの手のようなあたたかみのある、野尻の加工品をぜひ手にとってみてください。