宮崎市内から国道220号線を南に。日南海岸沿いにキラキラ輝く海を眺めながら車を走らせるのが、日南方面へ出かける時の醍醐味。宮崎育ちの人にとっては、海水浴やキャンプ、ドライブにいったかつての思い出が、ふと湧き上げる道程です。仕事で移動する時も、この風景を眺めていると懐かしい楽しい記憶がじんわり心を温めてくれます。
さて、今回お邪魔したのは日南市漁協女性部。日南の海を眺めたときのような、懐かしい気持ちにさせてくれる漁師町のお母さんたちの手作り料理を商品化しています。日南市大堂津の漁港の中にある加工場で、竹井友子さんにお話をききました。竹井さんは漁師の家に生まれ、遠洋漁業のご主人と結婚。2男1女を育てあげ、県外に住むお孫さんにカツオの加工品を送って「美味しい」と喜んでくれるのが何よりの楽しみということです。この日は、代表的な商品の一つ、かつおしょうゆ節の加工の様子を見せて頂きました。
かつおしょうゆ節は日南で古くから家庭の味として親しまれています。3枚におろしたカツオをしょうゆや砂糖、酒、焼酎などで煮込んだもの。あつあつのご飯にのせて食べるもよし、日南市内の学校では給食の具材としても登場しています。添加物を使わないのはもちろん、水も一切くわえず素朴ながらも力強い海の幸の味わいがぎゅっと詰まった郷土の味です。
加工場では大きな鍋で週に2回程度、300本から350本を作ります。大堂津で水揚げされたカツオが材料。頭とわたを取ってゆでた後、骨を取り除いて形を整えます。頭骨を取り除く作業では小骨も見逃さずにピンセットで丁寧に取り除くほど。さばきから、味付け、煮込み、袋詰めまで全て手作業のため、完成には2日ほどかかり、これからのシーズンはお歳暮用ギフト用にあわせて生産をしていく頃とのことでした。
日南市漁協が、水揚げした魚に付加価値をつけようと港内に水産加工場と造ったのが1994年。その後2001年からは漁協女性部が事業を引き継ぎました。商品は宮崎かつおうみっこ節だけでなく、とびうおのすり身を用いた魚うどん、かつおの角煮、ピリ辛煮、かつおハンバーグ、かつお風味の煮卵など。道の駅や、外食店の他、地元スーパーなどに販路を拡大しています。
「「魚離れと言われているが、まず宮崎の人から地元の魚を美味しく食べて欲しい!」と私たち取材スタッフにも明るく声掛けをする竹井さん。こうした細やかな声掛けが、多くの人に食べてもらえる商品を産み出す力になるのだなと思いました。お邪魔したこの日は、ちょうど遠洋漁業に出ているご主人の船が帰ってくる日。港での撮影中も、何度となく遠くの海を眺める姿が印象的でした。
かつおのしょうゆ節だけでなく、魚うどんや、角煮、ハンバーグ、煮卵などたくさんの商品を産み出して来た日南市漁協女性部。漁師町で、郷土料理に親しみながら育ち、地元の味を活かしてより多くの人に魚を楽しんで味わってもらおうと、活動を続けてきた竹井さんに、今後やってみたいことは?と尋ねると「何か新しい商品を開発したい」とのことでした。日南・大堂津のお母さん達の味、今度はどんな逸品が登場するのか、とても楽しみです。