国道10号線を走り高鍋町に入った時、美味しい物を食べようか、高鍋で手土産を買って帰ろうかと考えた時、まず思いつくのが「餃子」です。今回、お話を伺った「餃子の馬渡」さんのお店の開店は午後4時。とはいえ、餃子の仕込みは朝8時にはスタート。昼過ぎまでに約5000個の具材を手づくりし開店時間まで寝かせて熟成させて、営業が始まります。多くのファンの方から、ランチ営業の要望もあるそうですが、作り置きはせず、その日作ったものをその日に出すスタイルを守っています。
馬渡の餃子の特徴は、何といっても「皮」です。一口噛むと弾力を感じるほどの独特のもっちりとした存在感。基本的には50年前の初代の味を守り続けていますが、同じ工程を踏んでも、水や食材、気温や気候によって味や仕上がりは変化するもの。毎日の餃子作りの中で培った肌の感覚で、馬渡にしかない唯一無二の味を作り出しています。
お話を伺ったのは、馬渡陽一郎さん。幼少の頃から、餃子店の厨房で遊び、粘土がわりに餃子の皮に触れていたそう。中学校から高校時代はサッカーに熱中。福岡の専門学校に進学してデザインを学び、帰郷後も、宮崎県内のリゾート施設の内装を手掛ける等デザイン関係の仕事をしていました。 その後、祖父の代から続くお店の味を守りたいと家業を引き継ぎ、インターネット販売や催事の出店、デパートでの取り扱いと販路を広げてきました。とは言え、インターネットでの販売やデパート等での催事を始めた10年程前は、売り方、伝え方がわからず試行錯誤の連続だったのこと。催事では試食の数を増やす、ネット販売での価格設定を見直すなど、コツコツと工夫を続け、現在でも全国各地の有名餃子の味を検証し、餃子の町として知られる宇都宮まで足を運ぶなど研鑽を重ねています。
その中で、馬渡さんがずっと温めている思いは「餃子を宮崎の特産品にしたい」ということ。自分のお店だけでなく、「宮崎と言えば餃子が美味しいよね」という認知度が高まっていけばと話してくださいました。
確かに、調べてみると餃子の消費ランキングでは、県民人口100万人、一番人口の多い宮崎市でも30万人規模の小さなエリアであるにも関わらず、宇都宮市や大阪市などの大都市と肩を並べてランキング入りするなど、宮崎の餃子消費のポテンシャルはとても高いと言えます。
馬渡さんは、野菜や肉など農産物の生産が盛んで食材にも恵まれている宮崎の餃子を県内での消費だけでなく、いかに外にアピールしていくかが今後の課題と考えています。
「高鍋の人は誰もが知っている」
「宮崎県内では、まあ知っているかなくらい」
「でも、全国から見れば誰も知らない様な町の、小さな餃子屋さん」
馬渡さんは、自分のお店をこう表現します。
現在、馬渡さんの小学生の末娘さんが器用に餃子を包む様子は、自分の子ども時代とそっくり重なるとのこと。祖父、そして父から受け継いだその変わらぬ風景の中、毎日毎日餃子を手づくりし、その日作ったものをその日売り切る不動のスタイル。一個齧れば納得の馬渡の餃子を、高鍋のお店で、お土産で、お取り寄せでぜひ味わってみませんか。