海水浴やドライブのお土産に、宮崎の人には馴染みの深い青島ういろう。昭和40年代の新婚旅行ブームの頃には、青島神社へ向かう参道や、周辺の道沿いに青島ういろうを製造販売する50軒以上の店舗があったとのこと。明治10年頃から約140年もの間、地元の味として受け継がれてきた青島ういろうは、米粉(店舗によってはもち米粉)と砂糖を用いたシンプルな餅菓子。昔ながらの製法で作られる懐かしい甘さが特徴です。
今回取材にお邪魔したのは、宮崎市青島にあるういろう製造本舗ときわ屋。3代続くときわ屋のういろう作りの様子を見せて頂きました。
砂糖湯と餅米の粉を混ぜ合わせて蒸し器で蒸すというシンプルな行程ですが、湿度や気温などで仕上がりの味が微妙に変わってくるという繊細な作業。蒸し上がったあとは専用の台と調理用の糸で一気に切り分けます。蒸し上がりの湯気の甘い香りと、切り分ける前のういろうの艶やかさが印象的でした。温かさの残る出来立てを頂いてみると、あのういろう独特の締まった弾力はまだなく、ふんわりと柔らかい食感。時間をおく事で、美味しさをさらに引き立てる弾力が出てくるんだそうです。
お話を伺ったのは、原川紀代美さん。結婚を機に嫁ぎ先の家業であるういろう作りを手伝い、2016年の夏から本格的にういろう作りを引き継ぎました。
子育てと仕事をしながらの家業の手伝いは20年以上。朝6時に店に手伝いに行った後、家事を済ませて自分の勤め先に出勤という生活をしていた時期もあったそうです。かつては民宿も営んでいたという青島神社の参道入り口にある先代からの店舗と合わせて、自宅敷地内の作業所でういろう作りから、包装、配達までを一手に担っています。
青島ういろうといえば、白砂糖ベースの「白」と黒砂糖も入った「黒」の2種類が古くからのファンに親しまれていますが、ときわ屋では宮崎市内海地区で生産に力を入れているアシタバやコーヒー、緑茶、小豆などの味を楽しめます。青島周辺や宮崎市内の小売店や直売所で販売し、土日になると一日に200個近くを製造販売するそうです。
かつては、青島地区に50店舗近くあったういろう店も現在は10軒弱。今後は、他店舗同士の横の繋がりも意識して、近隣の店舗とコラボしてチョコレートをコーティングしたものなど、新しい形でのういろうのPRの案も出ているとのこと。多忙な毎日の中、月に一度の書道教室が楽しみという原川さん。
暖かみがあって素敵な手書きの看板も原川さんの手によるもの。約140年続く伝統の味を、今の時代とゆるやかにマッチさせながら守り育てていくときわ屋のこれからの展開が楽しみです。