今回取材にお邪魔したのは高鍋町にある「ひょっとこ堂」です。ひょっとこ堂では、宮崎県産の野菜や果物を使ったゼリー菓子の製造販売をしています。代表の田中陽一さんと名刺を交換させて頂いてまず目に入ったのが、アスリートフードマイスター3級の肩書き。アスリートフードマイスターは「スポーツのための食事学」を学び、食生活に役立てる人材を目指すものです。
偶然、宮崎でアスリートフードマイスターの勉強ができる機会があり講座を受講した田中さん。資格を取得した後、スポーツキャンプなどスポーツを目的に宮崎に来てくれる人を食で応援したいと考えていた時に知ったのが、マラソンや、山野を走るトレイルランなどで用いられるエナジージェルでした。
レース中に、疲労で走れなくなったり足がつったりするのを防ぐために用いられるエナジージェルは、一度に摂取できるカロリーがポイント。ヨーロッパのレースでは、数日かけてのトレイルランで100本以上消費するのだそう。ただ、栄養やカロリーを重視した海外製品では日本人選手の味覚に合わないのが難点でした。そこで九州各地にてトレイルランやリレーマラソンの企画運営を行う「有限会社ユニバーサルフィールド」さんの協力を頂き開発したのが、宮崎の果物を食材に使った宮崎エナジージェルです。添加物や化学調味料を使わず、マンゴーやブルーベリー、日向夏に、サトウキビやハチミツを用いて、美味しく戦える「BEE DASH」を商品化しました。
これまでも、宮崎県産の青果物を使ってゼリーを製造販売してきた田中さん。BEE DASHを商品開発することで、「誰のために」作るのかという感覚を実感できたと話します。田中陽一さんは福岡県出身。結婚を機に、妻の地元である宮崎県高鍋町に移住しました。製菓会社に就職し、全国の催事会場で営業販売をして行く中で、宮崎の美味しい食材を使った商品をより広く多くの人に楽しんでもらいたいという思いが膨らみ、独立起業しました。
宮崎で何気なく口にできる野菜や果物の美味しさを加工品にしたいと考えたのが、ゼリー作りです。宮崎では自社で作ったゼリーを密閉する機械を導入しているところは珍しく、関西方面などに加工を委託している状況を知り、宮崎の素材の良さを出しながら宮崎で加工できる仕組みを作りたいと、お菓子作り経験ゼロの状態から、ひょっとこ堂をスタートさせました。
自社で製造加工できる強みを活かして、今後は、例えばお客様の自宅でとれた果物で作ったゼリーを贈答品にするなど、最小ロット1個からのオリジナルゼリー作りにも取り組んでみたいと話してくださいました。
福岡県から移住してきた田中さんが、開業時のつけた社名「ひょっとこ堂」の由来は、もちろん宮崎県日向市発祥のひょっとこ踊りから。宮崎に来て初めて目にしたひょっとこ踊りに、小さい子どもからお年寄りまでみんなが笑って楽しんでいる光景がとても印象的だったと言います。みんなが笑顔になるお菓子作り、それはお客様だけでなく働いている人も笑顔でいられるようにと想いを込めて「ひょっとこ堂」と名付けたのだそうです。
アスリート向けのエナジージェルと合わせて、これから売り出そうとしているのが、ジュースです。
ひょっとこ堂のゼリーは生絞りの果汁をゼリーにしているのが美味しさのポイントです。この果物から生絞りをする行程を活かして、宮崎県産マンゴーのジュースを商品化しました。
ひょっとこ堂の商品は、高鍋町の店舗の他、宮崎空港ビル、宮崎県物産館、県内のデパート、インターネットで購入することができます。アイデアを活かしながら小回りが利く仕事をすることでお店のことを身近に感じてもらったり、お店の名前のように、喜んだり笑ったりしてもらえる仕事ができればと話す田中さん。宮崎の美味しさがぎゅっとつまったゼリーを食べて笑顔になる人の輪がこれからも広がり続けていくことと思います。