今回お邪魔したのは都城市高木地区です。地元の農業を守り盛り上げようと設立された農業組合法人きらり農場。その女性部の皆さんが、高木地区の郷土料理を中心に地元でとれた農産物を中心とした材料で農産加工物を製造、販売していると聞き、加工場に取材に伺いました。
午前8時。加工場ではその日直売所などで販売するための総菜作りの真っ最中でした。特に人気があるのが、さつまいもなどの野菜を揚げる「ガネ」です。あらかじめ材料をカットして計量したものが加工場の大きな冷蔵庫の中に袋に小分けしてあり、出荷する朝に味付けをしてひとつひとつ揚げていきます。
「ガネ」は地域によって食材が異なりますが、ここで使われているのはさつまいも、人参、玉ネギ、ニラ、そして地元のお豆腐屋さんから仕入れる国産大豆を使用したおからも入っています。元々家庭料理だったガネを販売することは立ち上げ当時は珍しかったとのことですが、最近では家庭でガネを作る事も珍しくなり、直売所でも人気商品のひとつになっています。この農業組合法人きらり農場女性部の取り組みについて山中美代子さんにお話を聞きました。
高校卒業後、東京でOL生活をしていた山中さんは帰郷後も都城市内の企業に勤めていました。その後養豚農家へ嫁ぎ、生産から販売まで一貫して携わる農業の魅力を体感します。そして、地元都城市高木地区の農業を盛り上げ次の世代に繋げていきたいと、女性部による加工グループに発足から参加したのが平成18年。勉強会や試作を重ね加工品の販売を行ってきました。女性部のメンバーは農家だけでなく専業主婦や定年退職を迎えた人など様々。朝や夜間などそれぞれの働ける時間帯に、食材の下ごしらえや、調理、販売を分担するワークシェアリングの形態をいち早く取り入れてきました。
この女性部立ち上げの時に立てた目標が三つあると山中さんは話します。一つ目は「地域の農業に貢献することで女性部の活動を多くの人に認めてもらう事」二つ目は「実益と生き甲斐を兼ねた事業にし、ボランティアではなく収入を得る事」そして、三つ目は「地域の郷土料理を作ることでその味を残し伝える事」。現在では、この女性部の取り組みが注目され各地から視察の依頼もあり、事業経営のポイントについてよく尋ねられるとのことですが、基本的にはこの三つの柱を軸にメンバーで知恵を出し合いながら加工場の経営を行っています。
地元の郷土料理「ガネ」やコロッケなどの総菜類とあわせて、今この加工場で売り出しているのがトマトの油味噌です。もろみのようにキュウリのスティックに載せたり、焼き鳥や炒め物に入れたりと用途は様々。宮崎県内の農産加工品を集めた物産展やデパートの催事などでも積極的に出品し、県外でもPR活動を行っています。
また、地元食材を使った加工品の製造販売だけでなく、きらり農場女性部では食育活動にも取り組んでいます。
都城市内の小学校で行われる調理教室に講師として参加し簡単に作れる郷土料理を子供たちに教えることで、最近では家庭で味わうことの少なくなった地元の味に親しんでもらう機会を作っています。
地元の農業や郷土の味を守り盛り上げるために何かをしたい!と、三つの柱を大切にしながら活動を続けて来た山中さん。今日も加工場では女性達の元気な笑顔とガネやコロッケを揚げる美味しそうな匂いが溢れていることでしょう。