「六次産業化」今でこそ、この言葉をよく聞くようになりましたが今回お邪魔した宮崎長友農園では、３０年以上前から自社農園で生産した農産物を加工することで付加価値を付けて販売を行い独自の販路を確保してきました。六次産業という名称は、農業本来の第一次産業だけでなく、第二次産業(食品加工)・第三次産業（販売流通）を取り込むことから、それぞれの数字「足した」ものと言われていますが、最近では有機的・総合的結合を図るものとして１×２×３の掛け算であるとも言われています。
宮崎長友農園ではカイワレ大根を主力として生産し、合わせて果樹園では果物も生産しています。カイワレ大根の生産を始めた当初から作業効率の向上や販路拡大のために浅漬けなどの加工販売も行っており、現在も自社のフルーツを使ったジャムの商品開発をして都心の有名ホテルに卸すなど独自の販売ルートを構築してきました。
農村の活性化や、農業経営体の経営の多角化のキーワードとして用いられる「六次産業化」という言葉ができる前から既に自社農園のものを加工販売していた宮崎長友農園を訪ね、お話を伺いました。
お話を聴いたのは、宮崎長友農園専務の長友宣洋さん。高校を卒業後 アメリカへ留学し福岡県で医療系の営業職に就いていましたが、実家が経営する農園の後継となるべく帰郷。農園では主に商品の加工を担当し新商品の開発を進めています。取材のため加工場にお邪魔すると早速薦めて頂いたのが、色鮮やかなフルーツジャムです。パイナップルやマンゴーなどのジャムを試食させて頂きましたが、中でも個性的だったのがパッションフルーツ。黒ごまのような細かいタネもそのまま瓶詰めしたパッションフルーツは、見た目も斬新。さらに、パンチの効いた酸味が食欲を刺激します。
この「酸っぱいジャム」を作るヒントになったのはお客様からの「商品の中で一番酸っぱいのはどれか」という問い合わせでした。これまでは、果物をできるだけやさしい甘さで食べやすく加工することをテーマとしていた長友さん。パッションフルーツのジャムを購入したお客様から、「こんなに酸っぱくて美味しいのはない！」との感想をもらい、こんな需要もあるんだという新たな発見となりました。
旬の時期に生の素材を頂くことは勿論大きな醍醐味ですが、加工品にすることで一年中その味を楽しめるようになるという付加価値が生まれます。「やっぱり宮崎の果物は色鮮やかで美味しい。だからこそ、加工する時には色も味も果物に対して素直にということを意識している」と長友さんは語ります。
長友さんが今後取り組んでみたい事は、今作っている商品をさらに磨く事。青果物は季節や気候によって味が変わります。果物や野菜をそのまま食べる時には、一個一個個体の味が違っていても「甘いね、酸味があるね」と味の違いを楽しむことができますが、加工品になって同じパッケージの商品になった後は、味の微妙な違いに違和感が出てしまうところが難しい点です。さらに果物や砂糖などの原料の質の向上と合わせて、例えばパイナップルのカットの仕方や、日向夏のベストな皮の刻みや厚みを探りながら味や食感、見た目も楽しめる加工の仕方を工夫していきたいとの事でした。
宮崎の青果物を加工して付加価値をつけ流通させることで、その美味しさをより多くの人に伝えたい。そのためには、地元生産者との連携協力が大切と長友さんは強調します。
生産農家から原料を少し高く買い取る、余裕のある所に多めに卸させてもらう。其々が協力しあって宮崎の加工品の生産力が強まる仕組みができることで、宮崎ブランドの商品を県外に打ち出し易くなります。六次産業化という農業活性化のためのキーワードが打出される前から、独自に生産加工を手掛け商品開発を行ってきた、宮崎長友農園。その商品は都内ホテルのレストランに使われるなど確実に販路が広がっています。地元清武町が名産品にしようと生産に力をいれているパパイアや、生産農家と連携して加工しているマンゴーなどを使った開発商品が、宮崎の味としてより沢山の人に美味しく味わってもらうのが楽しみです。
取材： 横山美和 （よこやま みわ）
宮崎市出身。宮崎大宮高校を経て、立教大学社会学部へ進学。在学中よりフリーアナウンサーとして活動。２００３年に帰郷しテレビ宮崎入社。現在は子育てをしながらUMKテレビ宮崎、MRT宮崎放送、宮崎サンシャインFMの番組、CM等に出演の傍ら、宮崎県内で絵本とピアノのステージ「おはなしとおんがくの森」の公演も行う。
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