今回の出逢い旅で、出会った川畑さん親子。まず、なんといっても心打たれたのが自店で造る蒲鉾への愛情と、その美味しさを伝えたいという熱い想いです。毎月、宮崎県内の食を巡る様々な方にお話を伺い、それぞれのものづくりやサービスへの思いに感銘を受けますが、川畑さん親子はとにかくよく喋る!親子同時に喋る!!喋りながら蒲鉾造りの手も休めず、使い込まれた道具の間をさっとすり抜け、取材スタッフに試食用の商品を次から次へと出してくださいました。
まず、頂いたのが地元では「天ぷら」と呼ばれる揚げ蒲鉾。薩摩揚げのような濃厚な甘辛さとは一線を画す(あの味ももちろん大好きですが!)、すり身の風味を前面に出したシンプルな味。
蒲鉾と一口に言っても、一つの工場で造られる商品は10種類から20種類と多岐に渡り、注文に応じて、また季節に応じて製造していきます。その様子を見せて頂きながら、お話を伺いました。
川畑蒲鉾店は、創業昭和元年、宮崎県の最南端串間市にあります。串間市の観光ポイントとなっているトビウオ漁など、かつては豊富な漁獲量を誇りその海の幸の生産加工販売の工場として、誕生しました。
川畑宜久さんは、この蒲鉾工場で幼少時代より職人さんたちの仕事の様子を見ながら育ち、店の三代目となりました。現在は、後継者となる長男の慶悟さんと、従業員5人で仕事に励んでいます。蒲鉾工場の朝は早く、川畑さん親子の出勤は早朝5時。在庫数と注文数を前日に確認して、その日に製造する商品の種類や数が決まります。早朝から仕事を始めるのは、加工する蒲鉾の材料となる魚のすり身の温度管理をしやすくするため。すり身の加工は時間との勝負で特に夏場は温度管理が難しいとのこと。そのため、すり身を扱う石臼は低い温度を保ちやすい大理石のものを使う等の工夫をしています。
見学をすすめていく中で、川畑蒲鉾店自慢のうず巻きのかまぼこ作りを体験させて頂ました。お祝いの席やお正月のおせちなどに登場するうず巻きかまぼこ。紅白のうずを巻いていて外側がギザギザしているのが特徴です。機械で巻いて行く工場では外の皮を焼き皮で仕上げていきますが、こちらではギザギザのジュラルミンに一つ一つ丁寧にすり身を塗りこんで手作業で巻いて行きます。
体験してみてまず、鉄型の重さにびっくり。長男の慶悟さんにお手本を見せてもらいました。左手に鉄型を載せ、右手に持った細工包丁で、型の隅から中程まですり身を伸ばすと、左の掌でくるりと器用に型を回して、もう片方の隅からすり身を伸ばしていきます。機械を使わずに手作りで、型に材料のすり身を塗りこんで作るのは県内でも珍しく、味がまろやかに仕上がります。年末の繁忙期は機械を使っているそうですが、常連のお客様には味の違いを指摘されるほど手作りのうず巻きかまぼこの味は親しまれています。
伝統の味を守りながら、川畑さんは新商品のヒントとなる試食会にも参加し新しい蒲鉾の可能性を探っています。そんな中、新たに製造販売を始めたのがイタリアン蒲鉾です。白身のすり身にバジルを混ぜ味を整えた新商品は一口かじっただけでも風味に存在感があり、キリッと冷やした白ワインと頂きたい逸品でした。
また、催事などの出店にも積極的に参加し、出店ブースでは、特製のちくわ焼き機を持ち込んで焼きたての味を楽しんでもらうなどのPRを行っています。
その他、串間市の蒲鉾工場の見学やかまぼこ作り体験ができる、体験型プログラムを設けるなど様々な取り組みを行い、地元で受け継がれたきた伝統の技術と味を次の世代に繋げていこうとしています。
川畑蒲鉾店の商品は、宮崎県内の食料品店、宮崎駅構内にある串間市の特産品を集めたチャレンジショップ、デパートなどでの物産展会場で手に入れることができます。ぜひ、手に取ってその伝統の味と技、そして愛情のこもった逸品をお試しください。