梅雨時期の長雨、そして梅雨明け直後からは連日の酷暑、そして台風の到来と共にぐっと涼しくなった宮崎の今年の夏。9月に入り夏の疲れがじわじわと来ているという方も多いのでは。そんなとき、気になるのが滋養強壮に効くと言われ、近年テレビ通販番組やスーパーの店頭でもよく見かけるようになった「黒ニンニク」。古代エジプト時代から薬として重用され、中国を通じて日本に伝わったとされるニンニク。白い果肉を高温高湿で熟成させて作る黒ニンニクは、一般に市販されているだけでなく、家庭で作るレシピもインターネットなどで広く普及しています。
その黒ニンニクの中でも、宮崎市佐土原町で宮崎県産の安心安全な商品を製造・販売し、海外にも販売している工場があるとのことで取材に行ってきました。お話を伺ったのは、株式会社MOMIKI 代表取締役の籾木真一郎さん。学生時代からラグビーに打ち込んできたとのことで、元気ハツラツの雰囲気。工場に併設された販売所で、開発した商品に囲まれながらお話を伺いました。
株式会社MOMIKIは、籾木さんの父親の代からスタート。木工用刃物の会社として創業し、その後大手メーカーの下請け企業として成長しました。籾木工業(当時)の信条は、競合他社が「出来ない」と断った難しい発注も要望に応えて請け負うこと。そうすることで厳しい競争を勝ち抜いて会社を成長させてきました。しかし、海外下請け企業の台頭や、親メーカーの縮小などのあおりを受け、業態転換を決意。8年前から携わり、当時珍しかった黒ニンニクの加工・製造を柱に、食品事業という形で「ものづくり」を続けています。
二代目となる籾木真一郎さんは、1975年生まれ。学生時代はラグビー一筋で過ごし、地元の佐土原高校卒業後は福岡の専門学校へ進みました。そのまま福岡で暮らしたいという思いもありつつ、帰郷。父親の会社に入り仕事を覚えていきながらも、自分なりの成果を出したいと葛藤する20代の日々だったと言います。
ラグビーの経験を活かしたジムや、近年需要が高まってきている高齢者介護の施設事業等、新たな事業展開を考えますが実現のメドは立ちませんでした。
そんな中、新たな事業として浮上したのが「黒ニンニク」の加工製造・販売です。以前から会社の施設の一部を賃貸して別会社が行っていた「黒ニンニク」の製造販売部門を一括して買い取り、会社のメイン事業として据える舵取りを籾木さんが行うことになったのです。
宮崎県庁前の楠並木朝市や、川南町の軽トラ市などに出店しコツコツと顧客を掴むところからスタートさせ、現在では通信販売やインターネット販売も運営。合わせて全国の催事にも出かけ、香港、台湾、シンガポール、アメリカなど海外にまで販路を拡大しています。
「とにかく、走りつづけてきた。そして今も、走りつづけている」と話す籾木さん。その中で一番力になるのは、商品を購入してくれるお客様と直接触れ合うことなのだそうです。普段、電話注文してくださる遠方のお客様に、近くで催事があることを伝えると会いに来てくれる。「こんな商品があると良い」という要望が新商品の開発のヒントとなる、など。応援の声は、会社のスタッフにも伝え、より良い商品作りへのモチベーションとなっています。
また、去年からは自社で農業生産法人も立ち上げ、黒ニンニクを使った液肥を用いて循環型の生産体制を作ることで、さらに安心安全な原料作りも進めています。
ニンニクだけでなく、他の野菜も手がけた新たな事業展開を将来的に構想するなど「まだまだやれることがいっぱい」と話す籾木さん。
かつて日本経済を支えた町工場の「ものづくり」のスピリッツが、「食」の事業へと脈々と受け継がれています。