宮崎県の最北部にある五ヶ瀬町は、日本最南端のスキー場のある町として知られています。町は、全体的に標高が高く、年間の平均気温は南国宮崎県の中にありながら長野県飯田市とほぼ同じという冷涼な地域で20cm以上の大雪となることもあります。その五ヶ瀬町を訪れたのは4月の終わり。茶畑の緑と空の青が眩しい中、町の特産品を使った加工場にお邪魔しました。
加工場を訪ねてまず聞こえてきたのが、大きく響く元気な笑い声。株式会社バーバクラブの代表宮﨑麗子さんをはじめ4人のお母さん方が笑顔で出迎えてくださいました。
五ヶ瀬町は平成5年グリーンツーリズムの町として町おこしをおこなっていて、年間を通じて農作業の体験等をかねた旅行者が多く訪れます。そのため、加工場に隣接する地区の公民館は簡易宿泊所も兼ねていて利用する人も多いとのこと。かつては山深い集落の一つにすぎなかった地域に国内外から多くの人がやってくる姿をみて、地元の主婦たちも何かできないかと立ち上げたのがこのバーバクラブです。
町のグリーンツーリズム構想の中心となったのが、「おかえりなさい ふるさと五ヶ瀬で こころのやすらぎを」をコンセプトに町内の桑野内地区を拠点とする『夕日の里づくり』です。私も以前、テレビの取材でこの町おこし活動のひとつである夕日の里フェスタにお邪魔したことがあるのですが、その夕日の美しさと、道行く人が初めて訪れた人にも「おかえりなさい」を声がけする暖かさに感動しました。この地区内にあるバーバクラブは、グリーツーリズムで町にやってくる人たちに、家庭菜園で作った野菜などで何かのもてなしができいかと、特産品作りを始めたのをきっかけに立ち上げられました。
始めは、地元の筍や椎茸を用いた佃煮の製造販売。そのうちにお菓子作りにも挑戦するなど試行錯誤を繰り返し、現在はかりんとう9種類、せんべい、クッキー、5種類の佃煮の製造販売、また五ヶ瀬町産の米を製粉して作る米粉パンを、町内の学校給食用に製造しています。この、米粉パンを試食させて頂いたのですが、手に持った瞬間にずっしりと来る重さがありながら手触りはしっとり柔らかで、口に運ぶとふわりとした甘さのあるほのぼのした味。子どもたちが元気に頬張る姿が思い浮かび、思わず笑顔がこぼれました。その他、委託販売でのロールケーキ作りや、イベントへの出品や町おこしの視察に訪れた県外の業者からもオリジナルテイストのかりんとう作りの委託を受けるなど、コツコツながらも手広く展開しています。
以前は、旅行や町内の指導員などの研修でヨーロッパ、ハワイなど海外や国内の多くの場所に足を運んでいたという宮﨑さん。今は、町の行うグリーンツーリズムの効果で、いろんな土地の人が地元に訪れ、都会と農村との人の交流を楽しんでいるといいます。現在は息子さん夫婦が引き継いでいる家業の茶園に、ドイツ、カナダ、サウジアラビアからも研修生がやって来るとのこと。
訪れた人に「ここは素晴らしい所」と言ってもらえたことで、山深い地域での暮らしの良さに気づかされ、自分たちも「ここはいいところですよ」と言えるようになったとも。人との交流が生まれたことで、加工場を立ち上げ元気に働き続ける宮﨑さんが大事にしているのが「働くことは人を楽にさせる」という言葉。とにかく笑い声が絶えないバーバクラブ。賑やかにしながら商品作りに励んでいるお母さん達のいる五ヶ瀬町に、元気をもらいにあなたも足を運んでみませんか?