今回訪れたのは都城市。味噌、醤油造りの老舗、ヤマエ食品工場にお邪魔しました。江戸時代から味噌醤油を作り、明治4年に創業したヤマエ食品工業。老舗の昔ながらの施設と近代的な設備を兼ね備えた施設で代表取締役兼会長の江夏喜一郎さんにお話を伺いました。
まずは、工場見学に案内していただきました。年間での醤油の出荷量は4330kl、味噌が1793t、業務用のタレ類が2373kl、つゆ、ドレッシング類が1873kl。
特に業務用のタレ類は、南九州の農畜産物の加工用としての需要が大きいのが特徴で「チキン南蛮のタレ」が有名です。
そして、つゆでは「高千穂峡つゆ」が代表的な商品。九州ではナンバー1の売り上げを誇っていて、今シーズンは同シリーズの新商品も登場しています。また、醤油キャラメルや、延岡市の特産「空飛ぶ新玉ネギ」を使ったドレッシング、カレーにかけるジュレ状の醤油など話題性のある商品開発も行っています。
ヤマエ食品工業のはじまりは、明治4年。霧島山系の豊穣な水を活用して、都城市に醤油、味噌の醸造業を創業しました。『江夏本店』として創業し、 その後、総合食品メーカーとして昭和41年に現在の「ヤマエ食品工業」と改称しました。創業者江夏岩吉氏の「工夫を重ねてよい品作り、お客様の満足、我が喜び」の教えをスローガンに、140年以上の歴史を刻んでいます。
江夏さんは、これからは学校給食にみそ汁を多く取り入れる、工場内の見学コースを充実させるなど味噌、醤油の良さ、美味しさを広く伝えて行きたいと語ります。近年の食の西洋化で味噌、醤油の需要が減ってきたものの、和食が見直されてきた最近は、国内だけでなく、海外でも販路の拡大を目指しています。
香港、台湾での市場への進出を図り国際見本市に出品するなど精力的に活動をしています。とりわけ、台湾は歴史的にも日本と関わりが深く、味にもなじみがあるため円安傾向の今がチャンスと江夏さんは話してくださいました。
また、9年前に会社に入って、まず江夏さんがこだわったのが「地域に根ざした商品作り」です。大手のメーカーには真似できないことは何か。それは南九州ならではの豊富な畜産物とつながる商品づくり。家庭用とあわせて、ヤマエ食品工業では、業務用、工場用の商品が出荷量の中でも多くを占め、食肉加工場での味付け調味料などとして出荷しています。
「地域に根ざした商品作り」をめざす同社の商品で最近、大きく話題となったのが、地元のカレー専門店と共同開発した、カレー専用醤油です。
独自の配合で甘口醤油の風味と甘みを活かしながらカレーにコクと旨味を加える、カレー専門醤油が完成しました。
ジュレと呼ばれるとろりとした濃厚な食感で、カレーとの相性がより引き立つよう仕上げました。
その他、極早生タマネギで全国で知られている延岡産のタマネギを使ったノンオイルのドレッシングや、宮崎だけでなく鹿児島県のJAと共同で生産量日本一の鹿児島県産オクラのドレッシングも商品化しています。
また、同社はウェブサイトも充実させ、企業紹介や商品紹介とあわせて、自社製品を使ったレシピなども公開しています。地元の食卓の味を支える老舗企業として、味噌、醤油の伝統の味を守りながら新商品を続々開発するヤマエ食品工業、その挑戦はまだまだ続きます。