日南市にあるSweets Factory MITSUKOにお邪魔したのは１２月の中旬。店先には、ポインセチアが植えられ可愛らしい四つ葉のクローバーが出迎えてくれました。今回お話をうかがったのは、日南Sweets Factory MITSUKOの代表、船上美津子さん。以前より、担当しているラジオ番組にゲスト出演してくださり、メイン商品であるチーズケーキも頂いたことはありましたが、日南のお店に伺ってゆっくりお話を聴くことができました。
船上美津子さんは、日南市大堂津の出身。日南高校を卒業後は大阪を経て東京へ。結婚後は横浜に住む、ご自身曰く「お菓子やパンを作ったり、有名店のケーキを食べ歩いたり、ごく普通の主婦」だったとのことです。転機となったのは、自宅からすぐ近くの有名洋菓子店でのパート募集をみたこと。
そのお店のチーズケーキが大好きだった船上さんは、お菓子作りの参考になればという気軽な気持ちで、週に３日のパート勤務を始めました。人気店での仕事は重労働で、多くの人が入っては辞めていく中、地道に仕事を覚えることに専念して働いていました。
そんな中、地元日南から毎年段ボールで４、５箱送られてくる日向夏みかんで美味しいチーズケーキがきっと出来るはずと思った船上さんは、新メニューに活用できないかとシェフに提案。日向夏みかんチーズケーキの商品開発が始まりました。
当時、関東在住の日南高校同窓生の中で、宮崎の日向夏みかんや金柑などの素材を使って新たな商品を開発し、宮崎の美味しいものを全国に広めていけないだろうかという話が発展したこともあり、平成１７年船上さんは地元日南市へ帰郷。小さな工場を日南市にオープンさせました。
３３年ぶりにＵターン、起業の経験も全く無く帰郷した船上さんは、農家の同級生や起業に協力してくれる支援者の手を借りて、自身の足で生産農家を回り、ケーキ作りに使う果物などを探し歩きました。ケーキ作りに使う食材は外国産のピューレなどを使用すれば手軽にそして安価に仕上げることが可能です。
しかし、加工された果物ではなく、地元宮崎にある新鮮で美味しい素材を手作りで加工し使うことで、砂糖の使用量なども抑えられ、素材本来の味を引き出すことができます。
日向夏みかんは皮の部分をデコレーションに使うため加工用といっても表面の色の鮮やかなものを、きんかんは洋菓子との相性を考え柔らかすぎず食感を楽しめる固さのものを、イチゴは加工スタッフがもったいないと思うほど完熟した旬の状態のものを使用するなど、地元の食材にこだわりを持ったケーキ作りをしています。また、実際に生産農家を訪ね歩き、収穫の手伝いや試食をさせて頂きながら苦労話を聞いたり、農家さんと対話をすることで、あたらしい商品のヒントをもらえることも多々あるそうです。
できあがった商品は最初に生産農家さんに試食していただき、感想を聞くことも欠かしません。
また、お店の主力であるチーズケーキ作りの作業を見学させて頂きました。スタッフと共に、船上さん自身も特製タルトにチーズを乗せて、一つ一つ手作業で丁寧に製造していきます。手早く滑らかに仕上げていく作業はまさに職人技。こうして仕上げられた商品は店頭販売だけでなく、通信販売等を通して全国に届けられています。実際に頂いてみると、濃厚なチーズと自社独自のタルトとの相性が何とも絶妙。フルーツとのトッピングのバリエーションも豊富でさまざまな味の表情を見せてくれます。
チーズケーキがお茶の席に並ぶと、思わず笑顔になり、一緒にいる人たちとの会話も楽しくさせてくれる逸品です。
チーズケーキ作りに魅せられ、地元の食材にこだわりをもった商品を開発して、故郷日南に根ざした洋菓子を全国に発信しつづける船上さん。
船上さんが愛情をこめて作るケーキで、これからも多くの人に幸せな気持ちをもたらし続けてくれることでしょう。
取材： 横山美和 （よこやま みわ）
宮崎市出身。宮崎大宮高校を経て、立教大学社会学部へ進学。在学中よりフリーアナウンサーとして活動。２００３年に帰郷しテレビ宮崎入社。現在は子育てをしながらUMKテレビ宮崎、MRT宮崎放送、宮崎サンシャインFMの番組、CM等に出演の傍ら、宮崎県内で絵本とピアノのステージ「おはなしとおんがくの森」の公演も行う。
facebook: 横山美和
