美和の宮崎出逢い旅。毎月、宮崎県内外で活躍する食に関する様々な方々にお話を伺っていますが、訪問した時の楽しい雰囲気をできるだけお伝えしたいなと考え、今回から文体を変えてお届けします。
今回、お話を伺ったのは「だしソムリエ」の岡田光さんです。初めてこのソムリエの存在を知る方も多いと思いますが、「だしソムリエ」とは、日本料理に欠かせない「だし」の正しい知識を持った専門家を育成するための資格です。この「だしソムリエ」の方が宮崎にいらっしゃるということで、宮崎県美郷町に行ってきました。
岡田光さんは、鹿児島県出身。嫁ぎ先の原木椎茸問屋岡田商店で、家業を手伝いながら新商品開発に取り組んでいます。干椎茸の美味しさの源になっている「うまみ」をもっと多くの人に伝える手だてはないかと考えていた時に、インターネットで偶然見つけたのが「だしソムリエ」という資格だったとのこと。
「だし」と一言でいっても、昆布や鰹節、干し椎茸と種類が多く、産地や製法、うまみの成分構成など、その美味しさを表現するためには様々な知識が必要です。岡田さんは「美味しさの表現を科学する」ために、だしソムリエの勉強に取り組んだと話してくれました。
岡田商店で扱う椎茸は原木干椎茸。原木椎茸は自然にあるクヌギやナラの木を原木として育ちます。その木（ホダ木）に椎茸の種（菌）を植え付けて丸２年間、木の中の栄養分をじっくりと吸い取り椎茸が育って行き、原木椎茸はその間、肥料や農薬をまくことは全くありません。椎茸を摂り終わったホダ木は養分を吸い取られて、手でさわるだけでボロボロと崩れるほどで、朽ちたホダ木はクヌギやナラの林に返されます。木の持つパワーを吸い取って生まれる原木椎茸は「自然と共生して生まれるきのこ」と言えます。
その椎茸を乾燥させることによって、カルシウムの吸収に必要なビタミンDが生み出され、旨味成分が１０倍以上に増加するとのこと。椎茸を乾燥させることは、サプリメントも冷蔵庫もない昔の人の知恵でもありました。
この干椎茸の美味しさをより多くの人に伝えるために、岡田さんは宮崎県が募集する新商品や名物を作る事業に応募し、干し椎茸を使った新商品を開発に取り組みました。アドバイザーの指導を受けながら、若手社員たちとアイデアを出しあい見えてきたコンセプトは「古くからある干し椎茸を、若い人にも手に取りやすいお洒落なイメージに変えたい」ということ。このコンセプトのもとに、バゲットにのせたり、やスープの具に入れるなど色々な用途に使える「椎茸パテ」のメニューを完成させました。ガーリックやオイル、塩も干し椎茸と同じく無添加のものを用い、オーガニックやマクロビオティックに興味のある人にも広めて行きたいと岡田さんの夢は広がります。
古くから自然の循環を生かして育った原木椎茸、その椎茸を乾燥させることでうまみや栄養分の増した干し椎茸。この原木干椎茸を若い人にも手に取りやすい形で広めて行きたいと商品開発に取り組んだ岡田さん。岡田さん自身も子供の頃から、玄米や野菜を使ったマクロビオティック食を取り入れた保育園に通うなど、安心安全で、身体を気遣う食への関心が高かったとのこと。
食に関する仕事に携われることを嬉しく思い、商品開発などでアイデアを出したり迷った時に背中を押してくれる若手スタッフたちに支えられていることに、とても感謝していると話してくださいました。
創業１００年を超える椎茸問屋に嫁ぎ、原木干椎茸の良さを伝える術を学びながら新メニュー作りに取り組む岡田さんが開発した「椎茸パテ」は発売までもう一歩。美味しくて身体にも優しいお洒落な「椎茸パテ」を店頭で見かける日が楽しみです。
取材： 横山美和 （よこやま みわ）
宮崎市出身。宮崎大宮高校を経て、立教大学社会学部へ進学。在学中よりフリーアナウンサーとして活動。２００３年に帰郷しテレビ宮崎入社。現在は子育てをしながらUMKテレビ宮崎、MRT宮崎放送、宮崎サンシャインFMの番組、CM等に出演の傍ら、宮崎県内で絵本とピアノのステージ「おはなしとおんがくの森」の公演も行う。
facebook: 横山美和
