9月。イセエビ漁が解禁になると宮崎県沿岸の各地では伊勢えび料理にちなんだイベントが数多く開催される。中でも日南海岸伊勢えび大漁まつりは今年で28回目を迎える。変化に富んだ海岸線に黒潮が流れ込む日南海岸は、水産資源が豊富でイセエビの漁場としても知られている。この日南海岸を車で走っていくと見えてくるのが、宿泊ドライブイン伊勢海老料理「大海」。日南市の宮浦漁港にも程近く、日向灘を眺めながら、宮崎の海の幸を堪能できる。
お話を伺ったのは、「大海」二代目の谷川圭之さん。取材に伺った日はお誕生日の翌日で、32歳になったばかりだった。谷川さんは日南高校を卒業後、徳島県の調理学校で学び、京都で8年間の修行の後、実家である「大海」へ後継として帰郷。今年の日南海岸伊勢えび大漁まつりの実行委員長として日南市17店舗で開催するイベントを主催している。
「大海」自慢の料理が運ばれてくると取材スタッフから、わっと歓声があがった。大振りのイセエビの刺身に、魚介のお造り盛り合わせ、そしてたっぷりのイセエビ汁。
その様子を嬉しそうに眺める谷川さんは、5年前に帰郷。大海の二代目として毎日調理場で腕を振るう一方、様々な地域の活動にも参加している。中でも一番勉強になっているというのが、宮崎市内を中心に活躍する料理人が集うシェフ会に参加することだ。30代から40代のオーナーシェフはイタリアン、フレンチなどの和食以外のジャンルの方がほとんど。食に関する情報交換をすることで新しい発見もあるが、同じ年代で高い意識を持っている人と話をして刺激を受けるのが一番の楽しみとのこと。
そんな谷川さんは、観光客向けの新しいメニュー開発などに取り組んでいる。特にこれまで店になかった海鮮丼は手軽にたくさんの種類の海の幸が味わえることで、今や一番の人気メニューとなっている。
今年の日南海岸伊勢えび大漁まつり実行委員長を務める谷川さんは、ここ数年の伊勢えび祭りの盛り上がりは、祭りを立ち上げて20年以上続けてきた積み重ねがあってこそと語ってくれた。ハイシーズンを迎えて、伊勢えび料理一色になるこの時期に谷川さんは次の展望を教えてくれた。
それは、1月から5月にかけて採れるムラサキウニ。宮崎県内でも珍しいムラサキウニが地元で多く採れることから、土地ならではの季節の目玉にならないかと考えている。海のすぐそばという店の立地を活かし、採れたての美味しさをアピールしたいというアイデアだ。ウニは通常、中身の形を整えるためミョウバンなどで下処理をするが、ここでは海水につけたまま調理場に運びそのまま食材にできるため本来の味をそのまま提供できる。
現在はこのムラサキウニは谷川さんがメニュー開発した海鮮丼に冬の間だけ登場させているが、今後は日南ならではの食の目玉として露出を増やして行きたいとのこと。
採れたてのウニを日南の海を眺めながら頂く冬のシーズンも待ち遠しく感じつつ、この時期はなんといっても伊勢えび。大海は毎週木曜日が定休。漁師さんと直接取引をしているので、新鮮さと味が売りの料理を是非大勢の方に味わって頂きたい。