事務所にお邪魔すると、ちょうどお菓子作りの真っ最中だった。 増田萌子さんは、宮崎市内に店舗を展開する、安心安全で高品質な食材をセレクトしたスーパーマーケットに手作りのマクロビスイーツを販売し、あわせてお菓子作り教室sweetmocomocoを展開している。 マクロビオティックのスイーツに出逢ったのは、大阪で暮らしていた短大時代。甘いお菓子が大好きだけど、食べ過ぎると太ってしまう、肌にも良くないというマイナスイメージを払拭するマクロビスイーツに魅せられ、本を見ながら自作でお菓子作りを始めた。しかし、思ったような美味しさに仕上がらず、できるだけ普通のお菓子の甘さや食感に近づけようと試行錯誤を続けるようになる。 その後、宮崎に帰り就職。仕事をしながら、趣味としてマクロビの料理教室に通った。マクロビスイーツ作りの中で増田さんがポイントにしているのは「甘さをどう出すか」ということ。基本的に白砂糖は使用せず、てんさい糖・メイプルシロップ、米飴など3〜4種類を混ぜ合わせて甘さを出している。
現在、販売しているのは、オートミールクッキー、いちじくのガトーショコラ、そして夏の時期に美味しい冷製ケーキムースなど。また、新作としてグラノーラも商品開発をしている。
卵、バターを用いないマクロビスイーツは生地のまとまりを出すのが難しく、さらりとした食感になりがちとのことだが、増田さんのスイーツにはそこにもひと工夫を加えている。
はじめに試食させてもらったのが、いちじくのガトーショコラ。ガトーショコラのしっとり感の中にある、イチジクの果肉の弾力が楽しい。バターの代わりに豆腐と白味噌を使ってしっとり感とコクを出しているとのこと。「カラダにいい」だけでは満足せず「おいしい」を追い求める増田さんの想いが伝わる逸品だ。
また、オーガニック食材と合わせて、豆腐、味噌、甘酒などの日本の伝統的な食材を用いたスイーツ作りをマクロビックスイーツ独特のノウハウを説明しながら実習するお菓子作り教室を開き、これまで培ったノウハウを、多くの人に伝えている。
今後の展開として、増田さんは仲間と共同で新会社を立ち上げる準備を進めている。
マクロビオティックの考え方にも共通する地産地消をキーワードに宮崎の農業と食をつなぐ役割を担いたいと考えている。生産農家のサポートと商品開発、料理教室もさらに発展させ、見せながら料理を作り出来立てを試食する「ライブキッチン」の手法を取り入れる。
新会社ハチドリの名前の由来は、会社立ち上げのリーダーから聞いた一冊の絵本による。南米アンデスに伝わる「ハチドリのひとしずく」という作品は、今、日本の若い世代に広がりニュースにも取り上げている。あらすじは、[ある日、森が突然大火事に襲われる。動物たちが我先に逃げるところで、ハチドリは森にとどまりくちばしに水を含んで火を消し続けた。周りの動物たちは「そんなことをして一体なんになるんだ」と笑うが、ハチドリは「私は私の出来ることをやりつづけたい」と水を運びつづけた]というもの。
「私は私の出来ることをやりつづけたい」趣味のお菓子作りから始まった増田さんの「出来ること」はマクロビオティックの考え方を通じて、食の楽しさを多くの人に伝えるということ。この8月にはライブキッチンのコースがスタートし、増田さんの夢の第一歩がはじまる。