総合食肉商社エムツーの中溝宏社長にお話を伺おうと、都城の事務所を訪ねた。中溝さんが経営する総合商社エムツーは、スーパー、デパート、ディスカウントストア、ホームセンターなどのテナントで食肉の販売を中心に行う総合食肉商社だ。
九州、関西に15店舗を展開する食肉販売の分野では、各店舗にバックヤードを作らず、都城市の食肉加工センターで高度な衛生管理の下パックし、温度管理をしながら配送する形をとっているのが特徴である。パックされた豆腐や納豆のように、冷蔵ケースさえあれば、ドラッグストアや日用品の量販店などでも販売が可能で、今後の販路拡大のセールスポイントとなっている。
そのほか、産直事業や料理教室、また農業法人の経営などもあわせて行っている。多岐にわたる事業を展開するエムツーの会社方針の第一に掲げられているのは「安心安全はすべてに優先する」という文言だ。
有限会社エムツーが力を入れている事業が、宮崎と都城で展開する料理教室「Manma(マンマ)」だ。中溝さんはお子さんが食物アレルギーを持っていた経験から添加物の怖さや、有機農業の重要さなどについて10年以上学び、多くの人に食の安全を伝えようと料理教室事業を始めた。 料理教室は初心者向けやスイーツ講座、ホームベーカリー講座など多彩なコースがある。季節のイベントに合わせたメニューや地元の生産者とのコラボ企画などもある中、特に注目なのが、今年度(平成25年度)から始めたマクロビオティッククッキングコースだ。正食協会認定の講座で、所定のカリキュラムを修了すると初級、中級の資格を取得できる。南九州ではマンマが唯一の教室となり、宮崎と都城の2つの教室で受講できる。また、家族で参加できるキッズの料理教室や子ども向けのイベントなど、食育の活動にも力を入れている。
有限会社エムツーでは、食肉の販売だけでなく、惣菜や野菜、6次産業化で作られた地域の商品が並ぶ地産地消の店舗「まんなか市場」を、宮崎と都城の2ヶ所で展開している。また、自社の商品開発も行い、自社製の焼肉のたれ、「にくほんぽ黒」「にくほんぽ赤」はモンド・セレクション4年連続金賞、国際最高品質賞を受賞し、フランスの和食店でも使用されている。
「にくほんぽ黒」は焼肉のタレとしてだけでなく、豚丼や牛飯、漬け込み用のタレとしても使用でき、「にくほんぽ赤」は、味噌ベースのまろやかな味わい。防腐剤や化学調味料を使用していない体に優しい調味料だ。エムツーの食肉テナントや、ボンベルタ橘地階食品のまんなか市場などで購入することができる。
食肉小売を中心に様々な事業を展開する中溝さんに、会社を経営にするにあたって欠かせない大事なものは何か伺ったところ「やはり人」という答えが返ってきた。会社方針の中にも「素直な人、正直な人、価値ある人を作る」「ひとりひとりが自立した商人の集団となる」という、「人」に関する文言が入っている。
さらに、エムツーでは料理教室、農業法人などそれぞれに経営責任者を置いている。一つの会社として経営を任せることで、次世代を担うリーダーとして多くの事を学んで欲しいと、中溝さんは、後進の経営者の成長を願っている。