高校の生徒の就職指導の時、目標をもって何かにチャレンジして欲しいと常々話していた。
公務員になれれば役場でも消防でも警察でも、という生徒に「先生だって、公務員じゃん」と呟かれた一言が、家業を継いで経営者になるきっかけになった。
父親が手書きで書いた経営指針、理念を当時のワープロで打ち直しながら、初めて「経営とは何か」触れた時期でもあった。
それから10数年。生徒たちとのつながりは続いている。役場の職員となった教え子から依頼があり町おこしの商品開発を依頼されることもあるという。
また、田原社長は地域活動にも積極的だ。地元のイベントの実行委員や子ども会、PTA活動、以前は少女バレーの指導もしていた。
地域の付き合いを深めていくことで、出逢いがあり、縁とアイデアがつながっていく。
その中で、多くの人が心地よく感じる付加価値を発見して商品づくりに活かしたいと語る。
例えば、生姜で何か商品をという時、粉末にしてジンジャーパウダーとして、エキスをシロップにして、ゆずとブレンドしてお茶に、調味料を入れてドレッシングにと、食品加工の技術を使うと多彩な売り出し方を考えることができる。
何と何をつなげるか、誰と誰がつながるか、何通りものストーリーがそこから生まれてくる。
田原社長の願いは「宮崎」が「京都」のようなブランド力を持つこと。
宮崎で生まれた仔牛を出荷して他県の高級ブランド牛に、お茶を静岡に出してブレンド、みかんを愛媛に出荷してジュースになど、素材としての高いポテンシャルを持つ宮崎の農産品。
今まで流通に出してどう使われ消費されるのか見えにくかった、加工して商品になり、消費者に届けられるプロセスを、生産者によく見える形で、顔を合わせながら商品開発を行う、その役割を担うのが、宮崎食研「てまごこち」という会社である。
宮崎のものに、もうひと手間をかけて、作る人も買う人も心地よくなる様な価値ある商品に。
田原社長が、生徒たちに伝えてきた「目標へのチャレンジ」はまだまだ続いている。