取材にお邪魔したのは11月半ば。冷たい雨の降る中、小林市にあるダイワファームを訪ねました。小林市は宮崎県の南西部にあり、熊本県、鹿児島県と県境を接しています。韓国岳、新燃岳、高千穂峰などの山々に囲まれ、霧島連山の山麓にあるため、名水が湧出し温泉も多い土地柄。豊かな水に恵まれ畜産、酪農を中心とした農業がさかんな地域です。
ダイワファームでは、牛舎の裏にある国有林の湧水を引き、更に天然鉱石を使って水にミネラル分を含ませて牛に飲ませ、牛舎にも天然鉱石や活性炭を敷いています。まず、牛舎を見学させてもらいました。
子牛から成牛まで十数頭が並ぶ牛舎は、活性炭が湿気やアンモニアを吸収する効果で、牛舎独特の匂いが少ないというのが第一印象でした。
先代からの酪農業を受け継ぎ、さらに生乳に付加価値をつける商品開発を行って商品化したアイスクリームやチーズの製造販売を行うダイワファームでは原料から製造・販売まですべて自社製品を使用しています。
特にチーズ作りでは、オールジャパンナチュラルチーズコンテストで入賞し県内外のレストランで食材として用いられるなど、その味と品質に高い評価が寄せられています。ダイワファーム代表の大窪和利さんがチーズ作りを始めたのは15年程前のこと。酪農関係の雑誌を読んでいたときに、家庭でできるチーズの作り方が載っていたのに目を止め、自宅で楽しむために作り始めたのがきっかけで、その後チーズ作りを本格的に学ぶようになり工房を立ち上げました。酪農業と合わせてアイスクリームの製造販売事業を立ち上げた時に大変苦労したという大窪さんに、何故さらにチーズの事業を始めようと思ったのか、何がポイントだったかと聞いてみたところ、「面白そうだったから」と、とてもシンプルで逆にはっとさせられる答えが返ってきました。
ナチュラルチーズの製造を始めたのは平成18年、その年にヨーグルトと合わせて販売も開始しました。
ダイワファームで自社製造しているのは、イタリアチーズと呼ばれる種類のもの。南イタリア原産のフレッシュチーズでサラダやカプレーゼの食材としても人気の高いモッツアレラは、ひとつひとつ形が異なりその手作り感に温かさが伝わってきます。そして、取材チームの女性スタッフたちに人気だったのが、ひょうたんのようなユーモラスな形をしたカチョカバロ。ダイワファームでは100g程のミニサイズですが、本場イタリアでは2〜3kgの大きさで作られるとのこと。
父の代から受け継いだ酪農業の大窪さんにとっての転機は平成5年。当時行われた厳しい生産調整で、生乳を出荷する従来の酪農業だけでなく新たな活路が必要でした。水やエサ、牛舎の環境整備にこだわり愛情をこめて育てた牛の恵みである生乳にどう付加価値をつけていくか。その活路を見出すために始めた自社での商品開発。その日の朝搾乳したばかりの新鮮な生乳を商品の原料とすることで、味と品質を保てるのがダイワファームの強みです。
また、宮崎県内の様々な食と農の店舗が月に1度集まり、宮崎市中心市街地で展開される街市に出店した際に偶然隣同士のブースだった縁で、都農ワインとのコラボ商品を提案するなど様々なアンテナを広げています。
今年の5月にも、イタリア・ナポリを訪れるなど味と品質の向上の為に研鑽を積む大窪さんによると、チーズ作りは、水や土地、気候の違いによって味に個性が出てくるとのこと。小林の豊かな水と土地の恵みを活かしたダイワファームの商品が、これからまたどのように磨かれていくのか、その展開が楽しみです。